女医

整形外科を受診して痛みの原因が特定できたならば、大抵の場合は保存療法から行います。保存療法というのは手術以外の治療法を指し、痛みを取り除くことや本来の機能を回復させることを目的として施されます。

安静療法

症状が出たらとにかく横になり安静にします。人の体には本来自己回復力が備わっていますので、これだけでも症状を軽減できることが少なくありません。急性期の症状に特に効果的です。

主婦の方であれば、家の中が気になり家事をしたい気持ちになるかもしれませんが、横になり安静にしていないと意味がありません。人は直立で立っているだけでも首の周囲の筋肉を使い負担をかけるからです。

ベッドや布団で寝ている時でもなるべくテレビや本は見ないほうが良いでしょう。寝ながらテレビや本を見ると首が不自然な状態になり首に負担がかかるからです。

温熱療法

患部を温める温熱療法は一般的なものでよく用いられます。患部を温めることで、周囲の筋肉の血行を改善し溜まっていた老廃物を流して痛みやこりを和らげます。

ホットパック

ホットパックを患部に当てることで体の表面から温めることができます。患部に炎症があるときや悪性腫瘍、知覚障害などを起こしている部分には行いません。今はネットでも購入することができるので、医師と相談の上セルフケアでも代替可能です。

赤外線療法

赤外線療法は機器を使って体に赤外線を加えて温める療法です。主に患部の表面を温める効果があり、表面から1cm以内の深さに届きます。

炎症時には控えることや長時間照射しすぎないようにしながら用います。

極超短波

極超短波療法とはマイクロ波を体に当てることにより、患部を温めてゆきます。赤外線などの温熱療法は体の表面から温めてゆきますが、極超短波療法は体の深部から温めてゆくのが特徴です。

注意すべき点としては、体に金属製の人工関節やクリップなどが入っている場合は、金属に熱が集まると内部からやけどを起こす恐れがありますので行えません。

装具療法

首の痛みが強い時や首を動かすと神経根を刺激する場合にはカラーを装着します。交通事故の際にむち打ちを発症した時に用いるのが代表的なケースです。

首を固定することで動きを制限し筋肉を休めることができ、周辺組織の回復と首の安定をはかります。基本的に寝る時以外はカラーを装着した状態で生活します。

カラーの着用が必要以上に長期間に渡ると、首の筋肉が弱まってしまいリハビリに余分の時間を要することになります。心配かもしれませんが医師の指示が出たらすぐに外して構いません。

けん引療法

けん引療法とはあごから後頭部のところにバンドを掛け上に引っ張る方法です。ややあごを引いた状態で約15分間ほどけん引と休止の繰り返しを行います。使うおもりは最初は5㎏あたりから始めて最終的には自分の体重の5分の1程度まで重量を上げてゆきます。

けん引療法を行うことで頚椎や筋肉を伸ばして緊張をほぐすことができます。椎間板に加わっていた余分な重力を軽くすることで、痛みやしびれを緩和させる目的で行われます。

私も頸椎椎間板ヘルニアを患った時にリハビリで行いましたが、急性期の症状が治まり始めた頃からけん引を行いました。劇的な効果はありませんが、自然治癒とともに行うと幾らかの効果が上がることは期待できるでしょう。

薬物療法

薬物療法には主に痛みや炎症を緩和するために薬を飲む方法と注射によるものがあります。

薬を飲む

痛みが強い時には消炎鎮痛剤を処方されます。薬が強くて胃が弱い方のために胃薬も同時に処方されることがあります。また座薬を使っても同様の効果があります。

筋弛緩剤は緊張状態にある筋肉を緩めるはたらきがあります。強い衝撃やショックを受けると首の筋肉が緊張した状態になりますが、筋肉が緊張してると血行が悪くなり痛みの原因となります。

筋肉のこりをほぐして血行を改善することで痛みを軽減させることができます。他には安定剤やビタミン剤を処方されることもあります。

注射により痛みを緩和する

星状神経節ブロック:星状神経節とは、のどの奥の方にある星のような形をした神経で、首や顔、腕などの交感神経に結びついています。

この神経節に穏やかな効き目のある局所麻酔を注射すると、交感神経がブロック(遮断)されて交感神経の興奮が抑えられます。そうすると関連する箇所の血管が広がり血液循環が改善されることで痛みが和らぎます。

ペインクリニックなどで行われることが多い療法です。強いしびれや冷え性にも効果があります。

トリガーポイント療法:トリガーポイントとは圧痛点のことで、痛みやこりを感じる部分で押さえる(圧迫する)と強く痛みを発する部分を指します。押さえることが強い痛みの引き金(トリガー)となる箇所のためこのような名前が付いています。

この部分に局所麻酔を注射すると1回あるいは数回の注射で効果が表れて痛みが和らいでゆきます。

※どの治療法を採用されるかは、医師とご相談になりメリットとデメリットを比較考量して決定されることをおすすめします。

手術について

一定の期間に上記の保存療法を行なっても改善が見られない場合や、生活に支障をきたしている場合などに手術が検討されます。手術は行うことによって症状が改善されると見込まれる場合にのみ行われます。