免疫というのは本来外部からウイルスなどの異物が侵入してきた時に攻撃する機能が備わっており、正常に作用すれば風邪が治癒しますし、傷口も自然と回復してゆきます。しかし免疫系が正常な機能を果たさなくなると、自分の身体を異物とみなして攻撃し、様々な症状を引き起こします。これを自己免疫疾患と呼びます。
自己免疫疾患には二種類あり、症状が全身に出るもの、特定の臓器に出るタイプとで特異的/全身性自己免疫疾患に分類することができます。
実際、自己免疫疾患は関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)に代表されるように知られているものから皮膚や目、血液や神経に至るまで多様です。自己免疫疾患の一覧はこちらをご覧ください。
[参考資料] Wikipedia:自己免疫疾患
自己免疫疾患の原因と治療
自己免疫疾患の原因については完全に解明されていませんが、遺伝的なものも要因の一つとして考えられています。加えて大きなストレスも疾患の引き金になることが多くの例から実証されています。
私の知人でも会社を退職する際に引き継ぎなどの大きなストレスを抱えてギラン・バレー症候群(臓器特異性自己免疫疾患の一つ)にかかった人がいます。
どのように自己免疫疾患を治療してゆくのでしょうか。ここでは全身性自己免疫疾患の一つである関節リウマチを例にとって考えましょう。
関節リウマチとは関節内の滑膜に炎症が起こり、症状が進行すると軟骨や骨の組織にまで症状が及びます。治療法としては消炎鎮痛剤を使い痛みを軽減しながら、抗リウマチ薬を用いて免疫異常を改善させます。
症状が強い時にはステロイドを用いることがありますし、抗リウマチ薬が効果を十分に発揮しないならば生物学的製剤の使用を検討します。
免疫抑制療法について
従来はステロイドの投薬が中心だったものが、近年は免疫抑制剤の使用により、より一層免疫疾患を効果的に処置してライフクオリティを上げることができるようになりました。
免疫抑制薬と言うのは、免疫反応が暴走しないようにリンパ球の数を増やさないようにしたり、異常な働きをしないようにコントロールする目的があります。増殖や機能を抑制する目的において幾つかの種類の薬があります。
しかし免疫の異常機能による炎症を抑えるためにストロイドは必要なので、従来通りステロイドの投薬と免疫抑制薬の二通りを使って改善を図ります。
◆投薬のタイミングの違い
先にステロイドのみを投薬して効果を確認し効果の度合いにより投薬を減らしつつ、症状が再び表れるか/あるいは出ないようにするために免疫抑制薬を投与します。
別の方法は、最初からステロイドと免疫抑制薬の二種類を投与して、症状の改善が見られたら、徐々にステロイドの投薬量を減らしてゆきます。しかしこの時も免疫抑制薬の投与は継続してゆきます。
疾患により複数の免疫抑制薬を同時に用いることもありますし、症状が軽減しても免疫の異常反応を抑制するために投与を継続することもあります。疾患によりケースバイケースです。
◆注意点
上記の点だけ考えると良いことずくめに思えるかもしれませんが、投薬は体全体の免疫を抑えてしまうことを忘れてはなりません。
免疫を抑制するので、疾患や感染症にかかりやすくなることもありますし、同時に治癒しづらくなる場合もあるからです。身体の異常機能を抑制するのはトレードオフなので、優先して治療すべき点は行いつつ、中間点を見出す必要があります。
日常生活において、風邪のウイルスをもらわないよう手洗いやうがいは徹底することや、疾患や投薬の量によっては外出を控えたほうが良い場合もあります。
他にもワクチンの種類(生)によっては打つことができなかったり、B型肝炎の罹患の有無を事前に調べておく必要があります。なお妊娠中(を予定している)の方や授乳中の方も注意が必要なので、治療開始前に医師と相談します。
治療を進めてゆくにあたり重要なのが生活習慣の改善です。食生活の工夫や睡眠を十分に取るなど規則正しい生活を送るだけでなく、過度にストレスをためないよう注意が必要です。